退職勧奨と退職強要の違いとは?不当な退職勧告への具体的対処法

退職勧奨と退職強要の違いとは?不当な退職勧告への具体的対処法

会社から退職を促された経験はありますか? 「退職勧奨」という言葉を聞いたことがある方がいらっしゃるかもしれません。会社からの退職勧奨は、必ずしも違法ではありません。しかし、中には「退職強要」とも言える、違法な退職勧奨も存在します。もし、あなたが会社から退職を勧められ、その進め方に疑問や不安を感じているなら、この記事はきっとお役に立つでしょう。

この記事では、「退職勧奨」と「退職強要」の違いを明確にし、あなたの状況がどちらに当てはまるのかを判断するための基準を提供します。具体的な事例を参考に、違法な退職勧要に該当するケースをチェックし、万が一、不当な退職勧告を受けた場合の具体的な対処法についてもステップ形式で詳しく解説します。

この記事を読むことで、あなたは不当な退職勧告から身を守り、自身の権利を守るための知識と具体的な行動ステップを手に入れることができるでしょう。弁護士監修のもと、厚生労働省の情報源も参考にしながら、信頼性の高い情報をお届けします。

1. 退職勧奨と退職強要の法的な違いと判断基準

退職勧奨と退職強要は、どちらも会社から社員に退職を促す行為ですが、その法的な意味合いは大きく異なります。この違いを理解することが、不当な退職勧告から身を守るための第一歩になるので、ここでしっかりと理解しておきましょう。

退職勧奨とは?

退職勧奨とは、会社が社員に対し、任意による合意退職を促す行為です。会社は経営上の理由や、社員の能力不足などを理由に退職を勧めることがあります。重要なのは、退職勧奨はあくまでも「お願い」であり、最終的な決定権は社員にあるという点です。社員は退職勧奨の話があったとしても、それを受け入れるか、拒否するか自由に選択できます。

退職強要とは?

退職強要とは、会社が社員の意思を無視し、強圧的な手段で自主退職を強要する行為です。これは違法行為に該当し、民法上の不法行為(709条)または刑法上の強要罪(刑法223条)に該当する可能性があります。退職強要は、社員が拒否してもなお圧力がかけられることもあり、社員の自由な意思決定権を侵害する、深刻な人権侵害行為と言えます。

退職勧奨と退職強要の判断基準

それでは、あなたの状況が退職勧奨と退職強要のどちらに該当するのか、判断基準を見ていきましょう。

区分 退職勧奨 退職強要
行為の性質 合意退職の「お願い」 退職の「強要」
意思決定権 従業員にある 会社側が一方的に決定
手段・方法 面談、書面など穏当な手段 脅迫、暴言、継続的な退職圧力、嫌がらせ、名誉毀損など強圧的な手段
違法性 原則として違法ではない(ただし、度を超えると違法となる可能性あり) 違法となる可能性が高い
対処法 拒否、交渉、弁護士・労働基準監督署相談 即時中止要求、証拠収集、弁護士・労働組合相談、裁判を通じた損害賠償請求
法的根拠 民法上の合意解約 民法709条(不法行為)、刑法223条(強要罪)、労働基準法違反(場合によっては)
具体的な状況 業績不振による人員削減、組織再編、社員の能力不足を理由とした退職勧奨 執拗に退職を強要する行為、退職を拒否する社員に不利益を与える行為、暴言や嫌がらせ、退職しなければ解雇などと脅迫する行為

退職勧奨であっても、その態様や程度によっては違法となる場合があります。例えば、長時間にわたる執拗な退職勧奨、暴言や脅迫を伴う場合、退職を拒否する社員に不利益をほのめかす場合などは、退職強要と判断される可能性があります。 退職に対する企業の対応方法はまちまちなので、一概に退職勧奨と退職強要の見分けがつくわけではありませんが、少しでも圧力や違和感を感じた場合は、すぐに身近な相談窓口へ相談してみましょう。

2. これって退職強要?具体的な事例と違法性チェック

これって退職強要?具体的な事例と違法性チェック

あなたが置かれている状況が退職強要にあたるかもしれないと感じたら、まずは具体的な事例と照らし合わせて、ご自身の状況をチェックしてみましょう。ここでは、退職強要に該当する可能性のある具体的な事例と、違法性チェックのポイントをご紹介します。

退職強要の具体的な事例

  • ケース1:執拗な面談と退職圧力

    上司から何度も呼び出され、長時間にわたる面談で退職を迫られる場合がこれに該当します。例えば「君はもう会社には必要ない」「辞めてくれないと困る」などと、人格否定とも取れる発言を繰り返し受ける場合。退職を拒否すると、「チーム全体に迷惑をかける存在だ」「他の社員の士気まで下げる」など、罪悪感を植え付けようとする発言がみられる場合などです。

  • ケース2:退職を拒否する社員への嫌がらせと排除

    退職勧奨を拒否した後から、急に仕事を与えられなくなったり、単純作業や雑用ばかりさせられるなど、業務上から排除される場合が該当します。会議やプロジェクトから外されたり、同僚が自分を避けるようになるなど、組織内で孤立感を感じる立場に追い込まれる場合もあります。上司から露骨な嫌がらせや暴言を受けることも、退職強要ととらえて問題ないです。

  • ケース3:解雇をほのめかす脅迫

    「退職勧奨に応じなければ、解雇も検討する」「自己都合退職にしなければ、退職金を減額する」などと、露骨に社員側が不利益になる条件をほのめかす発言を受ける場合がこれに該当します。解雇や退職金の減額だけでなく、退職を拒否すると、人事評価を低く評価したり、降格、左遷などの不利益な処分をほのめかされる場合も該当します。

  • ケース4:退職を強要する雰囲気づくり

    部署全体で退職勧奨が実施され、ほとんどの同僚が退職に応じる雰囲気の中で、退職を拒否しにくい状況に置かれる場合も、本人の意思を伴わない強制的措置と受け取れます。会社全体が退職を当然視する雰囲気になり、「辞めない人は非常識だ」というような圧力を感じる場合も同様です。

違法性のチェックポイント

上記の事例に照らし合わせ、ご自身の状況が以下の項目に当てはまるかどうかをチェックしてみましょう。

  • 退職勧奨が執拗に繰り返される
  • 長時間にわたる面談で退職を迫られる
  • 人格否定や脅迫めいた発言を受ける
  • 退職を拒否したら、業務から排除されたり、嫌がらせを受ける
  • 解雇や不利益処分をほのめかされる
  • 退職を強要する雰囲気の中で拒否しにくい
  • 自由な意思決定をする猶予を与えられない

これらの項目に複数当てはまる場合、あなたの受けている退職勧奨は、「退職強要」と判断される可能性が高いです。退職強要である可能性に気づいた時は、決して一人で悩まないようにしてください。次のセクションでは、具体的な対処ステップを説明します。

3. 不当な退職勧告から身を守る!具体的な対処ステップ

もし、あなたが不当な退職勧告を受けていると感じたら、泣き寝入りせずに、毅然とした態度で対応することが重要です。ここでは、不当な退職勧告から身を守るための具体的な対処ステップを、順を追って解説します。

Step 1:退職強要を拒否してみる

退職強要はあなたの意志を無視して会社都合で強制的に退職をさせようとする違法行為です。そのため、あなたが拒否の意志を示す行動は妥当といえます。何度退職強要をうけても、明確な拒否の意志を主張しましょう。

Step 2:現状把握と証拠収集

拒否の意志を示し続けても企業側の行動が改まらない場合は、まず、会社から受けている行為が、具体的にどのようなものなのかを正確に把握しましょう。退職勧奨の経緯、日時、場所、具体的な発言内容などを詳細に記録します。退職強要は証拠を残さないように行われることが多いです。そのため、面談の録音、メールや文書の保存、同僚証言の確保など、できる限り多くの証拠を収集し残しておくことが重要です。

Step 3:社内外の相談窓口へ相談

一人で悩まず、信頼できる人や公的な相談窓口に相談しましょう。

  • 社内の相談窓口: 社内に労働組合や相談窓口があれば、優先的に相談してみましょう。会社の対応や退職強要を行ってくる関係者との解決策を期待できます。
  • 社外の相談窓口:
    • 労働基準監督署: 労働問題全般に関する相談ができます。退職強要に近いと判断している行為が労働基準法違反に該当するか調査を依頼でき、調査の結果、退職強要が認められたら会社側へ是正勧告を出してもらえます。
    • 弁護士: 法律の専門家の立場から、退職強要の違法性判断と法的対応について専門的なアドバイスを受けられます。無料相談を提供している弁護士もおり、場合によっては労働審判や訴訟の対応もしてもらえます。また退職強要の初期段階で弁護士に相談すると、訴訟などを恐れた会社側の態度が軟化し、労働者側にとって有利な解決方法で進められる可能性があります。

Step 4:会社との交渉

相談窓口への相談結果を踏まえ、会社との交渉を試みます。退職勧奨に応じない意思を明確に伝え、退職強要に該当する行為を中止するよう求めます。交渉の際には、収集した証拠を提示し、法的な根拠に基づいた主張を行うことが重要です。

Step 5:法的措置の検討

会社との交渉が決裂したり、改善が見られない場合、法的措置を検討します。弁護士と相談しながら、訴訟や労働審判、仮処分申請など、具体的な法的手段を検討します。

Step 6:精神的なケアも忘れずに

不当な退職勧告への対応は、精神的に大きな負担となることがあります。信頼できる人に相談したり、カウンセリングを受けるなど、精神的なケアも大切にしましょう。

まとめ

退職勧奨と退職強要は似て非なるものです。不当な退職勧奨、つまり退職強要は、断固として拒否すべき違法行為です。もしあなたが退職強要を受けていると感じたら、この記事で解説した対処ステップを参考に、一人で悩まず、勇気をもって行動してください。

あなたの権利は法的に保護されています。泣き寝入りせずに、専門家の助けを借り、必ず解決の道を探りましょう。

関連記事