
少し前まで、リストラはどこか遠い世界の話のように感じていた人もいるかもしれません。そうでなくとも、リストラの話題が自分の生活に関わってくると想像していない方が大半でしょう。しかし、近年、大企業による早期退職者の募集や、ニュースで報じられる希望退職者の増加など、リストラは決して他人事ではない現実を突きつけられています。
特に、終身雇用制度が崩壊し、成果主義やジョブ型雇用が広まる現代において、リストラは年齢や役職に関係なく、すべてのビジネスパーソンに起こりうるリスクです。20代だから、30代だから、40代だから、50代だからと安心していられる時代は既に終わりを迎えているのです。
この記事では、20代から50代までの各年代別に、リストラの実情と、今すぐできる具体的な対策を徹底解説します。「自分はきっと大丈夫」と思っていても、この記事を読めば、リストラが身近な問題であることに気づき、具体的な対策を始めるきっかけになるはずです。
変化の激しい時代を生き抜くために、リストラのリスクに備え、主体的にキャリアをデザインしていくための一歩を踏み出しましょう。
1. 年代別リストラ事情:他人事ではない現実
リストラは、今やどの年代でも起こりうるものとなっています。ここでは年代別にリストラの対象となる原因を紹介します。
1.1. 20代:ジョブ型雇用でスキル不足が露呈?
雇用システムは大きく分けて二つあります。一つは、人に合わせて職務内容を変え長期雇用を目指すメンバーシップ型雇用です。もう一つは、職務内容に合わせて人材を雇用するジョブ型雇用です。日本では従来、メンバーシップ型雇用が主でしたが、近年はジョブ型雇用を行う企業も増えてきています。20代は、その影響を最も早く受ける世代と言えるでしょう。
ジョブ型雇用では、職務記述書(ジョブディスクリプション)に定義された職務を遂行できるスキルを持つ人材が求められます。もし、現在の仕事で求められるスキルと、自身のスキルにミスマッチが生じた場合、20代であってもリストラの対象となる可能性は否定できません。
また、AI技術の進化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により、これまで人が行ってきた業務が自動化されるケースも増えています。WebマーケティングやITエンジニアといった成長分野であっても、常に最新のスキルを習得し、市場価値を高めていなければ、将来的にリストラのリスクに晒される可能性があります。
そのため、「自分はまだ若いから大丈夫」と考えるのは禁物です。20代こそ、積極的にスキルアップに取り組み、市場価値の高い人材を目指すべきなのです。
1.2. 30代:キャリアの岐路、変化への対応が鍵
30代は、キャリアの方向性が定まってくる一方で、変化に直面しやすい年代でもあります。管理職への昇進が見えてくる人もいれば、専門性を深めるためにキャリアチェンジを考える人もいるでしょう。
しかし、会社の業績悪化や組織再編など、外部環境の変化によって、自身のキャリアプランが大きく狂ってしまうこともあります。特に、30代は住宅ローンや子育てなど、ライフステージの変化に伴い、経済的な負担が増える時期です。もし、リストラによって収入が途絶えてしまえば、生活は一気に苦しくなるでしょう。
そのため、30代はキャリアの安定を過信せず、常に変化に対応できる柔軟性を持つことが重要です。今の仕事にしがみつくのではなく、市場価値の高いスキルを身につけ、多様なキャリアの選択肢を持つことで、リストラのリスクを軽減できます。
1.3. 40代:管理職も例外じゃない、迫られるキャリアチェンジ
40代は、一般的に組織の中核を担う世代であり、管理職として活躍している人も多いでしょう。しかし、40代であってもリストラは決して例外ではありません。むしろ、人件費削減の対象として、高給な管理職層がリストラのターゲットになりやすいという現実もあります。
また、40代は、キャリアの成熟期を迎える一方で、新しいスキルを習得することに抵抗を感じやすくなる年代でもあります。しかし、テクノロジーの進化や市場の変化は加速しており、以前のスキルだけでは通用しなくなる可能性も高いです。
したがって、40代は管理職としての経験やスキルを過信せず、常に市場のニーズを把握し、自身のスキルをアップデートし続ける意識を持つ必要があります。万が一リストラされたとしても、以前の経験を活かし、新しいキャリアを切り開く覚悟を持つことが大切です。
1.4. 50代:役職定年、セカンドキャリアへの現実的な備え
50代は、役職定年や早期退職制度の対象となるなど、キャリアの終焉を意識せざるを得ない年代です。役職定年後も一般的に雇用は継続されますが、給与水準は大幅に下がるのがほとんどです。また、雇用人数が縮小されたり、早期退職が推奨されたりするケースも少なくありません。
50代は、セカンドキャリアを現実として捉え、早めに準備を始める必要があります。ここで言うセカンドキャリアとは、単なるキャリアチェンジではなく、退職後の身の振り方や過ごし方のことを指します。これまでのキャリアを振り返り、自分の強みや興味を再確認し、セカンドキャリアで実現したいことを具体的にイメージすることが大切です。
経済的な準備も重要です。退職金や年金だけでなく、自身の貯蓄や投資の状況も確認し、セカンドキャリアに必要な資金を明確にしておきましょう。
2. 年代別リストラ対策:今すぐ始めるべきこと
ここまで年代別のリストラ原因を紹介してきました。では、リストラの対象とならないようにするためには、どのような対策を行うべきなのでしょうか。年代別のリストラ対策をご紹介します。
2.1. 20代:市場価値を高めるスキルアップ戦略
20代がリストラ対策として最初に取り組むべきことは、市場価値を高めるためのスキルアップです。具体的には、以下の3つのステップでスキルアップ戦略を進めていきましょう。
ステップ1:市場価値の高いスキルの把握
まずは、現在の市場で求められているスキルを把握することから始めましょう。転職サイトや求人情報誌などを参考に、需要の高い職種やスキルをリサーチします。例えばWebマーケティング、ITエンジニア、データサイエンティストなどは、今後も需要が見込まれる分野です。
ステップ2:自分のスキルと興味を分析する
次に、自分のスキルや興味関心を分析します。これまでの仕事で培ってきたスキル、得意なこと、好きなことなどをリストアップしてみましょう。客観的に自己分析することで、市場のニーズと自分の強みを重ね合わせられるスキルが見つかるはずです。
ステップ3:スキルアッププランを策定し実行
市場価値の高いスキルを特定し、自分のスキルや興味を分析したら、具体的なスキルアッププランを策定します。書籍やオンライン学習、セミナーなどを活用し、効率的にスキルを習得しましょう。資格取得もスキルアップのモチベーションになります。Webマーケティング関連の資格や、IT系の資格など、市場で評価される資格取得を目指すのも効果的です。
2.2. 30代:変化に強いキャリアを築く、選択肢の多様化
30代は、変化に強いキャリアを築くために、選択肢を多様化することが重要です。具体的には、以下の3つの対策に取り組みましょう。
対策1:専門スキルにプラスαのスキルを習得する
現在持っている専門スキルに加えて、プラスαのスキルを習得することで対応できる仕事の幅を広げ、自身の市場価値を高めることができます。例えば、経理事務のスキルを持っている人であれば、英語やITスキルを習得することで、外資系企業やIT企業への転職も視野に入れることができます。
対策2:副業や兼業で収入源を多様化する
リストラのリスクに備えるためには、収入源を多様化することも有効です。副業や兼業を始めることで、本業以外の収入源を確保し、万が一リストラされた場合の経済的なダメージを軽減できます。また、副業や兼業を通じて、新しいスキルや経験、コネクションを獲得することもできます。
対策3:社内外にネットワークを構築する
社内外に幅広いネットワークを構築しておくことは、キャリア形成において非常に重要です。社内では、部署を超えたコミュニケーションを積極的に行い、人脈を増やしましょう。社外では、同業種交流会やセミナーなどに積極的に参加し、業界の人脈を広げておきましょう。
人脈は、日頃の情報収集を行ううえで有効であるだけでなく、転職活動や独立する上でも大きな武器になります。
2.3. 40代:経験とスキルを活かす、キャリアの棚卸しと再構築
40代は、これまでの経験とスキルを最大限に活かし、キャリアの棚卸しと再構築を行うことがリストラ対策となります。具体的には、以下の3つのステップでキャリアの棚卸しと再構築を進めていきましょう。
ステップ1:キャリアの棚卸しで自身の強みを再発見
まずは、これまでのキャリアを詳細に振り返り、自分の強みや実績を再確認します。具体的には、これまでに担当したプロジェクト、達成した成果、受賞歴や表彰など、具体的なエピソードとともに自身の業績をリストアップしてみましょう。過去の実績を振り返ることで、忘れていた自身の強みや業績を再発見できることもあります。
ステップ2:市場ニーズと自分の強みをマッチング
キャリアの棚卸しで自身の強みを再発見したら、市場ニーズと自身の強みをマッチングさせます。転職エージェントやキャリアコンサルタントはすぐに転職を考えていない場合でも、キャリア相談を受け付けているところもあります。キャリアの専門家に相談し、市場トレンドや需要のあるスキルセットについて情報を得ましょう。
自分の強みを市場でどのように活かせるのか、専門家の視点からアドバイスをもらうのが最適です。
ステップ3:キャリアプランを再設計し行動
市場ニーズと自身の強みをマッチングした結果に基づいて、新しいキャリアプランを再設計します。以前のキャリアパスに固執せず、柔軟かつオープンな考え方で新しい可能性を探りましょう。
転職、独立、起業など、さまざまなキャリアオプションを検討し、自分に最適な道を選択します。キャリアプランが決まったら、目標達成に向けた具体的な行動計画を策定し、一歩ずつ実行に移しましょう。
2.4. 50代:セカンドキャリアを見据え、早めの準備と情報収集
50代は、セカンドキャリアをいずれ現実となる出来事として捉え、早めの準備と情報収集を始めることが重要です。具体的には、以下の3つのポイントを意識してセカンドキャリアの準備を進めましょう。
ポイント1:セカンドキャリアの選択肢を広げる
セカンドキャリアというと、再雇用や転職をイメージする人が多いかもしれませんが、選択肢はそれだけではありません。独立、起業、ボランティア活動、NPO参加など、一企業に勤めることのみにとどまらないさまざまな働き方があります。
自分の興味関心やライフスタイルに合わせて、さまざまなセカンドキャリアのオプションを探りましょう。ハローワークやシニア向け人材紹介会社などに相談し、セカンドキャリアのオプションに関する情報を集めましょう。
ポイント2:健康と経済面をチェック
セカンドキャリアを実現する上で、健康と経済面をチェックすることは大切です。健康面では、今後の仕事に支障がないか、健康診断などでチェックしましょう。経済面では、退職金、年金、貯蓄などをチェックし、セカンドキャリアに必要な資金を見積もりましょう。必要に応じて、ファイナンシャルプランナーに相談し、ライフプラン全体での資金計画を見直すのも有効です。
ポイント3:以前の経験とネットワークを活かす
セカンドキャリアでは、これまで培ってきた経験とネットワークが強い武器になります。以前の仕事で培ったスキルと知識を活かせる分野を探りましょう。以前の同僚や取引先に連絡し、セカンドキャリアに関する情報を収集し、アドバイスを求めましょう。ネットワークを活用することで、予期せぬキャリアの機会につながる可能性もあります。
3. 全年代共通:リストラに備えるための心構え

ここまで年代別に、リストラの対象者になりやすい原因と対策を紹介してきました。ですが年代にかかわらず、リストラの対象者に選ばれてしまわないように、日頃から心がけられるマインドがあります。ここではそれについてご紹介します。
3.1. 変化を恐れず、常に学び続ける姿勢
変化の激しい現代において、変化を恐れず、常に学び続ける姿勢は、リストラ対策としてだけでなく、キャリア形成全体においてとても重要です。
テクノロジーの進化、市場の変化、社会の変化など、さまざまな変化に対して敏感になり、新しい知識やスキルの習得に積極的に挑戦しましょう。オンライン学習、セミナー、書籍など、学習リソースを積極的に活用し、日頃から新しい情報や技術をキャッチアップする学習習慣を日常生活に取り入れましょう。
学習を通じて継続的に成長することで、変化に強いキャリアを形成できるでしょう。
3.2. 自分の市場価値を客観的に把握する
リストラのリスクに備えるためには、自分の市場価値を客観的に把握することが重要です。自分のスキル、経験、実績などが市場でどのくらい評価されるのかを定期的にチェックしましょう。転職サイトに登録して、自身のプロフィールを入力し、提示されるポジションや給与水準をチェックしてみましょう。また転職エージェントやキャリアコンサルタントに相談し、専門家の視点から市場価値に関するフィードバックを得ることも効果的です。
客観的な市場価値を認識することで、必要なスキルや経験を見極め、スキルアップやキャリア開発につなげることができます。
3.3. 社内外にネットワークを構築する
社内外に強固なネットワークを構築することは、リストラ対策として非常に有効です。社内では、部署を超えたコミュニケーションを積極的に行い、人脈を増やしましょう。社外では、業界団体、セミナー、オンラインコミュニティなどに積極的に参加し、業界のネットワークを広げましょう。
このようなネットワークを築くことで、客観的な視点から社内外の新たな情報に触れられるだけでなく、転職活動、独立、新規事業の立ち上げなど、さまざまなキャリアの選択肢を探る上でも強力なサポートになります。困ったときに支援してくれる人、情報を共有してくれる人、機会を紹介してくれる人など、さまざまなタイプのネットワークを構築し維持しましょう。
3.4. 複数の収入源を確保する
リストラのリスクに備えるための最も効果的な対策の一つが、複数の収入源を確保することです。本業の給与に加えて、副業、投資、不動産収入など、複数の収入源を確保することで、経済的な安定性を大きく高めることができます。
副業を始めることは、当然ながら新しいスキルや経験を獲得する機会にもなります。例えば、投資を始めることは、資産形成につながります。不動産収入を確保することは、安定したキャッシュフローを生み出すことができます。
複数の収入源を確保することは、自分に合った収入源の多様化方法を見つけだすだけでなく、新たなスキルを学ぶ第一歩としても役立ちます。学ぶ習慣をつけ、少しずつ実行に移しましょう。
この記事では、20代~50代の年代別に、リストラ事情と対策、そして全年代共通の心構えについて解説しました。
リストラは決して他人事ではなく、すべての年代のビジネスパーソンに起こりうる現実です。しかし、正しい知識と準備をすることで、リスクを減らし、キャリアを守ることができます。年齢に関わらず、変化を恐れず、常に学び続け、自分の市場価値を高める努力を続けることが重要です。また、社内外にネットワークを構築し、複数の収入源を確保することも、リストラ対策として有効です。
この記事が、読者の皆様が自身のキャリア形成を主体的に考えるきっかけとなり、より良い未来を切り開くための一助となれば幸いです。今すぐできることから行動を開始し、自分らしいキャリアをデザインしていきましょう。